ここには強風にあおられる木々や空を切り裂く稲妻などが描かれているわけではない。赤、黄、青、黒などの点が、画面左上から放射状に画面全体を埋めつくしているだけである。それでもこの映像は、嵐にまつわる視覚的なイメージを喚起する。
[瑛九]の
[点描]による抽象画には、この作品のように自然のさまざまな様相を思わせるものが少なくない。点の集積の中に、光、風、大気など、手でつかむことのできないものの気配が感じられるからだろう。
[瑛九]自身、作品に「嵐」、「雲」、「影」などのタイトルを冠していることから、
[点描]の小宇宙に込められた自然に対するその思いを読みとることができるだろう。