宮崎に引き揚げた桃甫は、台湾で創りあげた
[フォーヴィスム]的な画風をますます押し進め、英子夫人に「売るための絵を描くつもりはない。」と言って生涯大胆な
[フォルム]と鮮烈な色彩で描き続けた。本作品は椅子に腰掛けて熱心に読書している少女を温かい眼差(まなざ)しで見つめて描いている佳品である。少女も猫も大胆に簡略化され、太く力強いりんかく線で縁どられている。衣服の白い色が黒猫と対照し合って効果的である。また椅子の座部や顔・腕などの赤い色が、画面の大半を占めている黒や黒褐色と響き合って快い感じを与えている。子どもや動物を愛し続けた桃甫の情熱が伝わってくる作品である。