桃甫は台湾在住時代から
[フォーヴ]ィスムの画風を追求していくが、宮崎に引き揚げてからその傾向はますます強くなっていく。昭和29年に没するまで、生涯そのスタイルを変えることがなかった。この作品は、絶筆となったもので、桃甫の追求した絵画理念の集約されたものといえる。女性の髪や眉は省略され、目・鼻も極端に単純化される。また、顔のりんかく、乳房、脚の部分も円で形どられている。赤、黄、緑は原色のまま使われ、その筆づかいは激しく、素早く動かされている。桃甫の身体の内奥から燃えるような情熱があふれ出てきた感があり、見る者に強烈な印象を与える。