山田は、昭和39年から40年にかけてフランスを中心に欧州各地を旅行する。その折、マルセイユの画友のアトリエを訪れた時のことを、山田は、「画家の生活の真髄と、色感への新しい示唆とは大きなショックとなり、其後の僕の信念に掛替のない何物かを与えたことは忘れられない。」と回想している。この作品は、そのマルセイユの港より丘を望んだ風景である。岸壁ぎりぎりまで迫った建物と逆光に映え丘の頂にまで建て込んだ家々からは、威圧するものが感じられる。また、画面は
[ペインティングナイフ]を使い細かい
[タッチ]で積み上げるように描かれ、山田の造形への追求心がうかがわれる。