銅版の表面全体に、くしの目のように規則正しく、水平、垂直、斜めの各方向に無数の平行線を刻みつける。
[メゾティント]の製版の第一工程である。通常、この段階で版は均一に地ごしらえされ、そのまま印刷すれば一面の漆黒となる。浜口はこの時、描き出すイメージの明暗に応じて刻線の重なりを調整し、微妙な濃淡の階調をつくっていく。浜口の
[マティエール]が、織物のような柔らかい風合いをもつのは、このためである。淡いグリーンの中に、ぽつっと赤いてんとう虫。早足で動き回るてんとう虫を思い出して、思わず顔がほころぶような作品だ。粗めにつくられた地の、夏着の絹のような
[マティエール]が、爽快な印象を生み出している。