この作品は昭和32年に制作されたもので、赤、黄、黒の3色刷りの
[リトグラフ]である。
[瑛九]はこの年に入ると油彩画でも、具象から訣別して抽象の世界に自信を持ってつきすすんでいく。そして、晩年の3年間で最も充実した抽象の世界が開花することになる。同年に制作された油彩画の「みづうみ」の画面には網目状の形態が表れてくるが、この作品にも画面中央部に同じような形がみられる。
[瑛九]の精神は、具象の世界から解放され、自由なイメージから生まれた色彩と形が画面を覆い、快いリズムをつくりだしている。
[瑛九]が求めていた抽象の世界に近づいた心のときめきをこの画題は表しているかのようである。