[瑛九]の
[リトグラフ]は、始めは単色刷りであったが、やがて多色刷りの作品を制作するようになる。この作品は4、5色刷りであるが、同じ用紙に色の数だけ、版を重ねて印刷する。この作品の左下には
[エディション・ナンバー]が記入されており限定10部の作品である。つまり
[瑛九]は、この作品を10部印刷するのに、少なくとも40回はプレス機を回す必要があったのである。もともと病気がちであった
[瑛九]にとっては重労働であったに違いない。しかし、わずか2年間で約150点もの作品を制作している。この作品は、赤と青を基調とした柔らかな色調で描かれ、人物らしきものが宙に浮き、中央の光り輝くものに導かれるようである。広い空間の中に幻想のドラマを感じさせてくれる。