[フォト・デッサン]集「眠りの理由」は、杉田秀夫が
[瑛九]としてデビューした記念碑的な作品といえる。これはその表紙である。昭和5年、19歳の
[瑛九]は、オリエンタル写真学校に入学し、写真や写真評論に没頭する。この頃から
[フォトグラム]の試作をはじめている。昭和10年、以前に制作した印画紙の焼きくずを見て、その美しさに改めて感動したことが
[フォト・デッサン]を生み出すきっかけとなった。カメラを使わず印画紙に直接光をあて感光させる
[フォトグラム]は、
[マン・レイ]や
[モホリ=ナギ]らによっても制作されているが、
[瑛九]が命名した
[フォト・デッサン]は、既成のものを置いたりするだけでなく、描いたものを切り抜き、それを型紙として使った絵画性の強い独創的なものであった。