バルラは、1913年から彫刻制作のための水彩の習作を数
[点描]いている。それらは運動の軌跡をしなやかな曲線としてとらえ、速度や音など目に見えないものを視覚的に表現しようとするものだった。
[未来派]の画家ボッチョーニの拳(こぶし)を
[モティーフ]にしたこの作品にも、運動のスピードとボリュームが、抽象的な形態に力強く表現されている。この作品は制作当初、赤く塗った厚紙でできていた。これは、ボッチョーニが「未来主義彫刻技法宣言」で示した大理石や
[ブロンズ]などの伝統的な素材に対する拒絶を反映している。当館所蔵の真鍮(しんちゅう)のバージョンは、1950年にバルラの指示の下で新たに鋳造されたものである。