バベルとは、ヘブライ語でメゾポタミアの古代都市バビロンのことである。旧約聖書には「バベルの塔」の建設と崩壊の物語が記されている。ルネサンス期以降は、円すい形の巨大な塔に、らせん状の通路をめぐらした形で表現されている。
この作品は、貝殻の渦巻きと「バベルの塔」のイメージを重ね合わせて描かれている。生き物の繊毛状の物体が貝を覆いつくし、やがて飲み込もうとしている。「滅んだもの、滅びつつあるもの、滅びを約束されたもののみを私は愛したい」と語る柄澤は、漆黒(しっこく)の画面に滅びゆくもののイメージを緊張感を持って描き出している。