世界各地で大きな事件や暴動等が起こった昭和43年、太佐は「画家は絵を描くべきではないのではないか」との思いにかられる。絵画とは、画家とは、と問い続ける中で、太佐は、画用紙に墨やインクをたらして水でふき取る作業を繰り返す
[抽象表現主義]的な制作に取り組むようになり、数十日間に渡って没頭した。本作品は、その中の1点である。
墨によるモノトーンを基調とした画面の中に施された、青とピンクが鮮やかで印象深い。また、幾筋にも流れ落ちるインクは、動きを感じさせるとともに、画面を切りさくような緊張感を生み出している。昭和63年に開催した個展の案内状に画像付きで紹介されており、太佐にとって思い入れのある1点と言えよう。