菅公(かんこう)の名でも知られる菅原道実は、高名な学者の家に生まれた。幼い頃よりかしこく、11歳の時に初めて詩を作ったという。この作品に描かれているのは、漢詩を作る道実と、それを見つめる父の姿であろう。父もやはり11歳の時に天皇に召され詩を作ったという。ほのかなあかりのもとで、詩作にはげむ父子の様子からは、あたたかな情感が伝わってくる。庭には、のちに道実が和歌によむ梅の木が描かれている。この絵は多門が24歳の時のもので、まだ
[雅号]も都洲(としゅう)を使っている。やわらかな色彩とおだやかな画風の人物画を多く描いていた頃である。