こぶしの花が咲く、農家ののどかな初春風景である。若い娘が、牛の親子を草むらへつれて行くところであろうか。民家のかやぶきの屋根、軒下に積まれたたきぎ、画面左の積みわらの上にはにわとりがおり、農村の生活感あふれる
[モティーフ]をやわらかい色調で描いている。多門の描く風景の多くには、大自然に囲まれてそこで生活する人々の様子が描かれている。この作品でも人物や家畜などを
[モティーフ]に、農村生活の一コマを描いており、心のなごむ作品となっている。この作品は大正4年に制作された。この年、多門は第9回
[文展]で三等賞を受賞しており、充実期の作品といえよう。