白樺湖は、長野県の蓼科山(たてしなやま)の西部に位置した高原にある湖である。小野は既成画壇やジャ-ナリズムに痛烈な批判をあびせることもあったという。昭和32年に
[創元会]を脱会し、その後
[十一会]も脱会している。公募団体から自らを隔離してゆったりと制作生活を楽しんでいる。小野の構図の取りかたは独特のものがある。この作品でも画面の下の手前の湖岸を極力すくなめに取り、また、空の面積も少なめに取ることによって、遠くに見える山々の広大さを効果的に表現している。色彩や木の表現などに小野の洗練された独自の境地をみることができる。ただ、目の前の風景を忠実に写しとる作業ではなく、小野独自の方法で十分に消化されたものが画面に表出されている。