自分だけの表現を模索し、また自分の心の中を描き出そうとし続けた海老原にとって、フランスで過ごした10年間はたいへん重要な時期であったのだろう。滞在前半は様々なテ-マに挑戦し、後半は雪山で働く人々や風景を青と白の色彩で描いたものに変わっていく。この作品は海老原がフランスから帰国した昭和8年に描かれたものであり、フランス滞在後半の青と白による色彩の特徴がよく出ている一つであろう。しかしこの時代の広く視野をとった風景とは違い、手前に大きく木々を配している。降り続ける雪を画面全体に描き、鳥と木の先端に視線を注いだこの構図は、他の海老原の作品にはあまり見られないものになっている。