桂ゆきは、戦前のまだ油絵が女性にはなじみのうすかった時代から、異色の女流作家として
[東郷青児]や
[藤田嗣治]、
[海老原喜之助]らから認められ、
[前衛]画家として注目を集めていた。既成の絵画のあり方にとらわれず、自分だけの作風をつくりあげようとするその制作態度は、平成3年に77歳で亡くなるまで貫かれた。桂の作品には、しばしば奇妙な生き物が登場する。この作品に描かれているのは虎であろうか。桂は昭和30年の「虎の威を借りた狐」という作品で、虎を権力の象徴として描いている。この作品に描かれた虎は、奇妙に誇張されたユ-モラスな表現をたたえており、彼女独特の優雅な社会風刺といえるだろう。