この作品は、長野県にある蓼科山(たてしなやま)を描いたものである。山々の稜線(りょうせん)が手前の方から徐々に蓼科山の頂上へ向かい、色も緑の深さを増し幾重にもかさなっていく。色を置いていくように、一筆一筆ていねいに描き、重ねた色が下の色と響き合っている。小野の作品は、画面構成、
マティエールや色づかいなどで、「
大和絵風の表現」「
日本画的な空間と装飾性」と評されていた。この作品でも、光沢のない絵肌と色調などに小野の特徴が表れている。この作品は、小野の晩年56歳の頃に描かれたものであるが、色彩と斬新な画面構成に、衰えることのない創作意欲を感じることができる。