この作品は、1948年に
[デカルコマニー]で描かれた絵を、後に版画として再制作したものである。ベルメールの版画やデッサンは、鋭く硬質な線による表現に特色があり、色彩の広がりからなるデカルコマニーの作品は例外的だ。
幾重にも重なる下着の裾や少女の手足からは、黄色味を帯びたベールが垂れている。胴体部には格子状の粗い肌理が表われているが、これはフランスの収容所でレンガ積み作業を経験したことのあるベルメールが、その苦痛を人体の表面に表したものだとされている。偶然得られた形状に、ベルメールの卓越した細密描写が加わり、怪しい魅力を放つ独特な世界を形成している。