中学生のころから抽象画を描いていた太佐は、
[自由美術家協会]展や
[美術創作家協会]展に出品、入選を重ねていた。しかし、戦争とそれに続く急激な復興の時代、太佐は絵筆をとらなかった。10年におよぶ沈黙のあとに制作を再開した太佐は、昭和28年と29年に連続して県展(現宮日総合美術展)で特選を受賞する。
昭和29年の受賞作であるこの作品は、色、形ともにとりどりの色面を暗色の線でつないでいる。不定形の平面の連鎖が生む、うずまき、わきたつような動きは、不可測のエネルギーの噴出を予感させる。「時代の類型的な美意識にノンと言う自分の立場を明確にしたかった」という太佐の情熱が、抽象的構成に有機的生命を吹き込んでいる。