宮崎県立美術館
宮崎県立美術館外観 ロビー

コレクション展

当館の収蔵作品を紹介するコレクション展。郷土作家はもちろん、海外の著名な作家の作品も多数紹介しており、
県外から来られたお客様にも大好評をいただいています。コレクション展は年に4回、多彩なテーマを設けて開催します。

令和5年1期コレクション展 2023
  年4月8日(土)から6月25日(日)まで 観覧無料

名品セレクション −生命の息吹

 宮崎県立美術館は、現在約4,200点の作品を収蔵しています。それらの作品は、1.郷土出身作家及び本県にゆかりのある作品、2.わが国の美術の流れを展望するにふさわしい作品、3.海外のすぐれた作品という3つの収集方針に基づいて収集されています。
 ここでは、「名品セレクション −生命の息吹」と題して、当館のコレクションを代表する名品の中から自然や生命の輝きが感じられるような作品を紹介します。
 戸谷成雄の「「森」0612」は2006年に当館で公開制作された作品で、宮崎県産のツガ材が使われています。戸谷は森の中を歩いている時に感じる、あらゆる方向から来る気配としての視線の束を、彫刻で表していると述べています。上村次敏の作品は、青年期を過ごした宮崎の亜熱帯気候の植物から影響を受けた鮮やかな色彩の植物を、多方向からの視点を組み合わせて描いています。さまざまな作家の視点を通して、生命の息吹に触れてみてください。


ピエール・ボナール「海岸」

ピエール・ボナール
「海岸」

 

宮崎の美術 −表現する女性たち

 ここでは、宮崎県ゆかりの作家の作品を紹介します。中でも、宮崎県を代表する4名の作家は、年間を通して展示しています。
 明治時代に活躍した日本画家として、伝統的な狩野派の流れを汲む山水画で力を発揮した山内多門と、秀麗な美人画で広く知られていた益田玉城が挙げられます。一方洋画家では、塩月桃甫が台湾で美術の振興に努めるとともに、太い輪郭線と鮮やかな色彩で独自の画風を追求しました。また、力強い筆遣いで生命力あふれる女性像を描いた山田新一は中央画壇で活躍しました。
 特集展示では、宮崎ゆかりの女性作家たちによる作品を展示しています。女性であることで教育の機会を制限されたり、作品を「女性らしさ」というステレオタイプで語られたり、「女性にしては」と正当な評価を受けられなかったりと、さまざまな厳しい状況に直面しながらも、作品制作に向き合いつづけました。表現する主体としての作家たちの作品をご覧ください。


山田キミ「青柿」

山田キミ
「青柿」

 

版の楽しみ

 版画とは、木や金属板など版材となるものを彫ったり、削ったり、細工を施したりして原版を作り、インクを付けて和紙や洋紙に転写して、複数枚の絵画を作る技法や作品のことです。
 作家たちは、版画技法の特色を生かし、工夫を凝らしながら版を作り上げていきます。1枚の作品を作るのに、何枚もの版を作る必要がある場合もあります。版を作り、試し刷りをして納得ができる刷り上がりになれば、本刷りに入ります。版画を刷る紙も、技法によって適するものを選びます。色数が多い作品は、色ごとに刷りを繰り返して1枚の版画が刷り上がります。そうしてできた作品には、サインやエディションナンバー(限定枚数を記した番号)を書き入れることもあります。
 ここでは、作家たちが独自の表現を追求した様々な版と紙が織りなす作品をご覧ください。


アンリ・マティス「ピエロの葬式」

アンリ・マティス
「ピエロの葬式」

 

瑛九のあしあと

 宮崎市出身の瑛九(本名:杉田秀夫)が、画家を目指して上京し、日本美術学校に入学したのは14歳の時です。学校は中退してしまいますが、描くことは続けました。画集や展覧会を見ては国内や海外の作家の作品を研究し、時には評論を書くこともありました。初期の頃は、刺激を受けた作品に似た画風の絵を描いていましたが、独自の表現を求めて次々に描き方が変化します。また、油彩だけではなくフォト・デッサンや版画など、様々な技法に挑戦し、時には共通の図柄や型紙などを使用することもありました。
 ここでは、最初期の油彩「秋の日曜日」から、瑛九と名乗り始めたフォト・デッサン集『眠りの理由』や、絶筆の大作「つばさ」に至るまで、瑛九が挑み続けた画業について作品とともに振り返ります。


瑛九「つばさ」

瑛九
「つばさ」

近代イタリア彫刻

 長い歴史と伝統を持つイタリア彫刻は、これまでの伝統の理念に則った古典主義から、19世紀末になると表現主義的な風潮に変化していきました。
 メダルド・ロッソ(1858〜1928)は、印象派絵画のように光の効果を彫刻に取り入れ、微妙な陰影を表現することで、瞬間の印象を再現しようとしました。蝋を使い、細かなところを省いた大胆な表現は、近代イタリア彫刻の先駆として大きな影響を与えました。
 アルトゥーロ・マルティーニ(1889〜1947)は、伝統的な表現に関心を持ちながらも、様々な思想を学び、具象から抽象まで新たな表現を探求しました。後に、マルティーニがこれまでの伝統を否定した『彫刻−死語』を出版したことは、イタリア彫刻の前衛的な造形の可能性を広げました。
 20世紀初頭に起こった未来派運動に参加したジャーコモ・バラ(1871〜1958)は、物体の連続する動きを並べて描く手法を発展させ、抽象的な立体作品を制作しました。
 伝統の再生と革新の両面において多様性を見せた近代イタリア彫刻をご堪能ください。


アルトゥーロ・マルティーニ「ピサの女」

アルトゥーロ・マルティーニ
「ピサの女」

ギャラリートーク

 展示の見どころや作品について、分かりやすくお話しします。
 途中からのご参加も可能です。お気軽にご参加ください。


  • 場所:コレクション展示室
  • 所要時間:30分程度

 ※ 参加無料・申込不要

日時 テーマ 場所
4月23日(日) 14:00〜 コレクション展(第1期)の見どころ 全室
5月28日(日) 14:00〜 名品の魅力 −生命の息吹 展示室1
6月11日(日) 14:00〜 宮崎の美術 −表現する女性たち 展示室2

みやざきデジタルミュージアム
コレクション展で展示している当館収蔵作品の画像や解説等(一部)がご覧になれます。


令和5年度のコレクション展
※内容等につきましては、都合により変更する場合があります。

第1期

名品セレクション
−生命の息吹
宮崎の美術
−表現する女性たち
版の楽しみ
 瑛九のあしあと
近代イタリア彫刻

 

シニャックやフィニー、桂ゆきなどの名品をはじめとした自然や生命の輝きが感じられる作品を紹介します。
宮崎県を代表する画家、山内多門や益田玉城などの作品とともに、貴嶋ユミや児玉実枝ら表現する女性たちに注目して紹介します。
版材や版の作り方、色の扱いや刷り方など、版画の技法によって異なる表現を味わえる小企画です。
宮崎市出身の画家、瑛九の初期作品から最晩年の作品まで、画風の変遷をたどります。
近代イタリア彫刻の先駆者であるマルティーニやロッソに焦点を当てて紹介します。

令和5年4月8日(土)
〜6月25日(日)

第2期

たのしむ美術館

 

子どもから大人まで、どなたでも気軽に美術を楽しんでいただける展覧会です。すてきな発見や感動が待っています。

令和5年7月1日(土)
〜9月12日(火)

第3期

名品セレクション
+没後40年 山口長男
宮崎の美術
−置県140年 県庁建設記念作品
伊達孝太郎が見たアメリカ
瑛九は語る
現代彫刻−国内作家−

 

マグリットやミロ、エルンストの名品を展示するとともに、没後40年を迎える山口長男の作品を特集します。
宮崎県を代表する画家、塩月桃甫や山田新一などの作品とともに、県庁新庁舎の建設記念として制作された山元春挙や小早川秋聲らの宮崎を描いた作品を紹介します。
明治期にアメリカで研鑽を積み、肖像画家として活躍した宮崎出身の洋画家・伊達孝太郎のアメリカ時代の足跡を紹介します。
瑛九が美術評論や書簡で語った美術に対する思いを、作品とともに紹介します。
川原竜三郎の物語的な魅力ある作品や、異素材を融合させて制作している保田井智之ら国内作家の作品を紹介します。

令和5年9月16日(土)
〜12月17日(日)

第4期

名品セレクション
+新収蔵 アンドレ・マッソン
宮崎の美術
−新収蔵 根井南華
ジャン・アルプ
瑛九の1957年

 

ピカソや元永定正などの作品にみられる独自の形態の表し方に注目するとともに、新しく収蔵したマッソンの挿画本を展示します。
宮崎県を代表する画家、山内多門や山田新一の作品とともに、新しく収蔵した根井南華の作品を資料と併せて紹介します。
生き物を思わせる丸みを帯びた抽象作品により、独自の世界を追求したジャン・アルプの作品を紹介します。
晩年の点描に向かって変化が見られ始めた1957年に着目して、瑛九の作品と活動を紹介します。

令和6年1月5日(金)
〜4月9日(火)

 

過去のコレクション展はこちら(PDFファイル 697KB)